警察官の高卒区分の年収|給料表の級と号給から確かめる
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警察官の給料の額は、47の都道府県がそれぞれの条例で決めています。だから「警察官の高卒区分の年収はいくらか」という問いに、全国共通の一本の答えはありません。答えがあるのは、受けようとしている1つの自治体の条例の中だけです。
この記事は、その条例の別表に置かれた給料表を実際に開き、高卒程度の区分で採用された人がどのセルから始まるのかを特定したものです。読み終わると、自分が受ける自治体の額を、平均値に頼らず自分で出せるようになります。
試験の日程・科目・倍率・勉強法は扱いません。当サイトが扱うのは待遇の側だけです。
「警察官の年収」を1つの数字で書けないのは、額が47の条例に分かれているからです
額を決めているのは国ではなく、採用する都道府県の条例です。この記事で実際に開いた資料と、そこに書かれていたことを先に並べます。いずれも2026年9月24日に編集部が原典にあたりました。
| 開いた資料 | そこに書かれていたこと |
|---|---|
| 地方自治法204条3項 | 給料・手当・旅費の額とその支給方法は、条例で定めなければならない |
| 地方公務員法25条3項1号 | 給与に関する条例には「給料表」を規定するものとする |
| 地方公務員法25条4項 | 給料表には、職務の複雑・困難・責任の度に基づく等級ごとに、明確な給料額の幅を定めていなければならない |
| 警察法56条1項 | 都道府県警察の職員のうち、警視正以上の階級にある警察官は一般職の国家公務員とする |
| 和歌山県「警察職員の給与に関する条例」別表第2 | 警察官給料表の1級は、1号給225,600円から始まり1号給ずつ刻まれている |
| 東京都「初任給、昇格及び昇給等に関する規則」別表第6ハ | 公安職給料表の初任給は、Ⅰ類が1級25号給、Ⅲ類が1級9号給 |
| 警視庁採用サイト「給与・昇任制度」 | Ⅲ類採用者の初任給は279,400円(給料月額に地域手当20%を加えた額) |
この7つを並べると、額が1つに定まらない理由が見えてきます。給料表そのものが自治体ごとに別の条例に置かれていて、しかも同じ「高卒程度の区分」でも入る位置が違うからです。
警察官以外の職種まで含めた公務員全体の待遇は、この記事では扱いません。初任給がどう決まり、昇給がどこで止まるのかを事務職まで含めて整理したものは、事務職を含む公務員全体の初任給と昇給を扱った親記事にあります。本記事はそこから警察官1職種に降りて、給料表のセルを特定するところを引き受けています。

給料表は条例の別表にあります|地方自治法204条3項と地方公務員法25条3項1号
給料の額を決めているのは、募集要項でも人事の裁量でもなく、条例に添付された1枚の表です。
地方自治法(昭和22年法律第67号)204条3項は「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。」と定めています。同法204条の2は、さらに踏み込んでいます。地方公共団体は「いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これを…支給することができない。」とされています(いずれも2026年9月24日に編集部がe-Gov法令APIで原文を確認)。
その条例に何を書くかは、地方公務員法(昭和25年法律第261号)25条3項が7つの号で列挙しています。1号が「給料表」、2号が「等級別基準職務表」です。そして同条4項は、給料表について次のように定めています。
前項第一号の給料表には、職員の職務の複雑、困難及び責任の度に基づく等級ごとに明確な給料額の幅を定めていなければならない。
(引用:地方公務員法25条4項/2026年9月24日に編集部が原文を確認)
「等級ごとに明確な給料額の幅」という書き方が、給料表の形そのものを決めています。縦に等級(級)、横または縦に号給が並び、その交点に1つの額が置かれています。読者が最終的に探すのは、この交点の1つです。
手当の種類も、法律が列挙しています
条例で支給できる手当は、地方自治法204条2項に名前が並んでいます。扶養手当・地域手当・住居手当・通勤手当・単身赴任手当・特殊勤務手当・時間外勤務手当・宿日直手当・夜間勤務手当・休日勤務手当・管理職手当・期末手当・勤勉手当・退職手当などです(同項を2026年9月24日に確認)。
年収を組み立てているのは、この列挙のどれを何か月分もらうかです。給料表の1セルが土台で、そこに列挙された手当が乗ります。順番が逆になることはありません。
和歌山県の警察官給料表を1級だけ開く|225,600円から271,600円まで、1号給ずつの刻み
実際に1つの県の表を開くと、額は号給という単位で1段ずつ並んでいます。
和歌山県「警察職員の給与に関する条例」(昭和29年6月30日条例第21号)は、7条3項で「給料表は、警察官給料表(別表第2)のとおりとする。」と定めています。その別表第2の1級を、1号給から25号給まで書き出したものが次の表です(2026年9月24日に編集部が和歌山県例規集で確認)。
| 号給 | 給料月額 | 号給 | 給料月額 |
|---|---|---|---|
| 1号給 | 225,600円 | 14号給 | 254,400円 |
| 2号給 | 228,000円 | 15号給 | 256,400円 |
| 3号給 | 230,400円 | 16号給 | 258,000円 |
| 4号給 | 232,800円 | 17号給 | 259,600円 |
| 5号給 | 235,100円 | 18号給 | 261,100円 |
| 6号給 | 237,500円 | 19号給 | 262,600円 |
| 7号給 | 239,900円 | 20号給 | 264,100円 |
| 8号給 | 242,100円 | 21号給 | 265,600円 |
| 9号給 | 244,300円 | 22号給 | 267,100円 |
| 10号給 | 246,400円 | 23号給 | 268,600円 |
| 11号給 | 248,500円 | 24号給 | 270,100円 |
| 12号給 | 250,500円 | 25号給 | 271,600円 |
| 13号給 | 252,400円 |
太字の2つが、この県の初任給基準表が指している号給です(後述)。
この表は、上に行くほど刻みが小さくなります
1号給から5号給までの4段で上がる額は9,500円、21号給から25号給までの4段では6,000円です(いずれも編集部の算出)。同じ4号給でも、位置によって3,500円の差が出ます。
編集部はこの表を、端点と増分の両方で検算しました。1号給の225,600円と25号給の271,600円の差は46,000円で、途中の24段の増分をすべて足した額も46,000円で一致します。区間ごとにも一致することを確かめてあります。

高卒程度の区分が入る号給は、都道府県ごとに違います|東京都は1級9号給、和歌山県は1級5号給
同じ「高卒程度の区分」でも、入る位置が自治体によって違います。
東京都「初任給、昇格及び昇給等に関する規則」(昭和48年3月31日人事委員会規則第3号)の別表第6ハ「公安職給料表初任給基準表」には、4つの区分が並んでいます。
| 試験(選考)の区分 | 初任給 |
|---|---|
| Ⅰ類 | 1級25号給 |
| Ⅱ類 | 1級17号給 |
| Ⅲ類 | 1級9号給 |
| 社会人 | 1級33号給 |
(出典:東京都例規集「初任給、昇格及び昇給等に関する規則」別表第6ハ/2026年9月24日に編集部が確認)
一方、和歌山県「警察官の初任給、昇格、昇給等の基準に関する規則」(平成5年3月31日人事委員会規則第3号)の別表第6「警察官給料表初任給基準表」は、2つの区分だけを持っています。上に置かれた「警察官A」が1級21号給、下に置かれた「警察官B」が1級5号給です。
2つの県で、下の区分が入る号給が4号給ずれています。東京都のⅢ類は1級9号給、和歌山県の警察官Bは1級5号給です。表が違うので額を直接比べることはできませんが、位置そのものが県ごとに決められていることは、この2つを並べるだけで分かります。
上の区分との差は、どちらの県も16号給でした
東京都はⅠ類(25号給)とⅢ類(9号給)で16号給、和歌山県は警察官A(21号給)と警察官B(5号給)で16号給です(差はいずれも編集部の算出)。
この16号給が何年分にあたるかは、規則の中に換算のレートがあります。和歌山県の規則14条1項は、新たに警察官となった者の号給を決めるとき、経験年数の月数を12月で除した数に4を乗じた数を加える、と定めています。このレートで数えると、16号給は4年分です(編集部の算出)。
和歌山県の表で16号給ぶんを金額に直すと、265,600円と235,100円で30,500円の差になります(編集部の算出)。
編集部は、この30,500円を「学歴の差」とは呼びません。表の上では、大学に通っていた4年間を経験年数として数えたときの位置の差として置かれているからです。
「学歴免許等」という欄に並んでいるのは、学歴ではなく試験の区分名です
初任給基準表の学歴の欄に書かれているのは、学校の名前ではなく採用区分の名前でした。
和歌山県の規則の別表第6は、列の見出しが「試験」「学歴免許等」「初任給」の3つです。ところが「学歴免許等」の欄に入っている文字列は「警察官A」「警察官B」で、学歴の名前ではありません。東京都の別表第6ハも同じで、並んでいるのは「Ⅰ類」「Ⅱ類」「Ⅲ類」「社会人」という区分の名前です。
これは表記のゆれではなく、制度の形です。額を分けているのは、その人の最終学歴ではなく、受かった区分のほうです。
募集する側も、そう説明しています
警視庁の採用サイトのFAQには、次の2つの記述があります(2026年9月24日に編集部が原文を確認)。
受験者本人がこれらの要件を満たしていると考えれば受験することができます。学歴については成績証明により、学力については採用試験の結果により確認することとなります。受験資格の捉え方はⅢ類についても同様です。
大学卒業の人がⅢ類で受験することはできます。ただし、Ⅰ類とⅢ類とでは、警察学校での教養期間(初任教養)や初任給などに違いがあります。
つまりⅢ類は「高卒の人だけが受ける区分」ではありません。大学を出た人も受けられ、その場合の初任給はⅢ類の号給になります。逆にⅠ類の受験資格には「大学卒業程度の学力を有する人」という道もあります。
だから「高卒だから安いほうの表に入る」という言い方は、制度の説明として正確ではありません。入る号給を決めているのは、受けた区分です。
なお、受験資格と日程は年度ごとに変わります。当サイトは試験の対策・日程・科目を扱いません。受けるかどうかを検討する段階になったら、各都道府県警察の募集要項を直接確認してください。
級を分けているのは階級ではなく職です|1級「係員の職務」から9級「警察本部の部長の職務」まで
等級別基準職務表に、巡査・巡査部長といった階級名は出てきません。
和歌山県の条例は、別表第1に「等級別基準職務表」を置いています(根拠は同条例7条)。1級から9級まで、それぞれの級の基準になる職務が文章で書かれています。
| 職務の級 | 基準となる職務(抜粋) |
|---|---|
| 1級 | 係員の職務 |
| 2級 | 困難な業務を行う係員の職務 |
| 3級 | 主任の職務/特に困難な業務を行う係員の職務 |
| 4級 | 係長の職務/困難な業務を行う主任の職務 |
| 5級 | 調査官の職務/課長補佐又は警察署の課長の職務 |
| 6級 | 管理官の職務/次席、次長又は副隊長の職務 |
| 7級 | 警察本部の課長、隊長又は監察官の職務/警察署の署長の職務 |
| 8級 | 理事官の職務/困難な業務を行う警察本部の課長の職務 |
| 9級 | 警察本部の部長の職務/警察学校の長の職務 |
(出典:和歌山県「警察職員の給与に関する条例」別表第1/2026年9月24日に編集部が確認。級によっては職務が複数並んでいるため〈7級は5項目〉、本表は代表を抜粋しています)
編集部が2回にわたって表の文言を確かめた範囲では、この表に「巡査」「巡査部長」「警部補」「警部」の語は出てきません。級を動かしているのは、係員・主任・係長・課長といった職のほうです。
警察法(昭和29年法律第162号)62条は、警察官の階級を「警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長及び巡査」の9つと定めています。階級と職務の級は、どちらも9段階ですが、別の制度です。級を上げる手続きそのものは当サイトの守備範囲の外なので、ここでは扱いません。
警視正から上は、そもそも国家公務員になります
警察法56条1項は「都道府県警察の職員のうち、警視正以上の階級にある警察官(以下「地方警務官」という。)は、一般職の国家公務員とする。」と定めています(2026年9月24日に原文を確認)。
つまり階級が上がりきったところで、適用される制度そのものが条例から国の側へ移ります。国の側の表は、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)6条1項4号が置く公安職俸給表です。人事院規則九―二(俸給表の適用範囲)4条1号は、公安職俸給表(一)の適用範囲に「警察庁の警察官及び皇宮護衛官並びに都道府県警察の警察官」を挙げています(いずれも同日に確認)。
そして警察法56条2項は、それ以外の都道府県警察の職員(地方警察職員)についても国の側を向かせています。給与などを定める条例や人事委員会規則を、警察庁の職員(同法34条1項)の例を基準として定めるものとする、という一文です。地方の表が国の表と似た形になるのは、ここに理由があります。
採用案内に載る初任給279,400円は、給料表のセルの額そのものではありません
採用案内の額には、給料表の額に地域手当が乗っています。
警視庁の採用サイト「給与・昇任制度」は、初任給をⅠ類321,900円・Ⅲ類279,400円と公表しています。同じページが、この額を「給料月額に地域手当(20%)を加えたもの」「100円未満切捨て」と注記しています(令和8年1月1日現在。2026年9月24日に編集部が確認)。
同じページには実務2年目の年収例も載っていて、Ⅰ類が6,574,400円、Ⅲ類が6,045,700円です。こちらは「給料月額と地域手当のほか、期末・勤勉手当(年間おおむね4.90か月分)等」を含むと書かれています。
編集部が重く見ているのは、この2つが「平均」ではないことです。条件を1つに固定した1人分の試算であって、在職者を集計した値ではありません。上の2つの差を取れば、初任給で42,500円、実務2年目の年収例で528,700円になります(いずれも編集部の算出)。ただしどちらも地域手当を含んだ額どうしの差なので、給料表のセルの差とは別物です。

給料表を動かすのは人事委員会の勧告です|地方公務員法26条と国家公務員法28条2項
表の数字が毎年動くのは、勧告という手続きが法律で決まっているからです。
地方公務員法26条は、給料表についての報告と勧告を人事委員会の仕事として書いています。
人事委員会は、毎年少くとも一回、給料表が適当であるかどうかについて、地方公共団体の議会及び長に同時に報告するものとする。給与を決定する諸条件の変化により、給料表に定める給料額を増減することが適当であると認めるときは、あわせて適当な勧告をすることができる。
(引用:地方公務員法26条/2026年9月24日に編集部が原文を確認)
国の側にも、対になる規定があります。国家公務員法(昭和22年法律第120号)28条2項は、人事院が毎年少なくとも1回、俸給表が適当かどうかを国会と内閣に報告することを定めた条文です。同項は、俸給表に定める給与を100分の5以上増減する必要が生じたと認められるときは、勧告をしなければならないとも書いています(同日確認)。
2つの条文の違いは、語尾に出ています。地方は「勧告をすることができる」、国は一定の要件のもとで「勧告をしなければならない」です。
ここが、民間の勤め先と大きく違うところだと編集部は考えます。表の額がいつ・誰の手続きで動くのかが、法律に書いてあります。自分の給料の上がり方を、人事の判断ではなく手続きで読める職場は多くありません。
自分が受ける県の額にたどり着く6つの手順
ここまでの条文と表を、読者自身の手で1つの数字にするところまで落とします。必要なのはブラウザだけで、費用はかかりません。
- 「(都道府県名) 例規集」で検索し、例規のデータベースを開く。編集部が今回開いた東京都と和歌山県は、いずれも例規集をインターネットで公開していました
- 「警察職員の給与に関する条例」を探す。独立した条例を持たず、一般の「職員の給与に関する条例」の中に公安職給料表を置いている自治体もあります(東京都がこの形です)
- 給料表の種類を定めた条文を見て、別表の番号を控える。和歌山県は7条3項、東京都は5条1項です
- その別表を開き、1級の1号給から順に額を読む。刻みの大きさが、1年でどれだけ上がる表なのかを教えてくれます
- 「初任給、昇格、昇給等の基準に関する規則」を同じ例規集で探し、初任給基準表を見る。自分が受ける区分が1級の何号給から始まるのかは、ここに書いてあります
- 4と5を突き合わせて、セルを1つに決める。その額が、手当が乗る前の出発点です
この6つを終えると、手元に残るのは額そのものではなく、額の出どころです。年度が変わって表が改定されても、同じ経路をもう一度たどるだけで自分で更新できます。
自治体名を入れた質問が実際に多いことも、この手順を勧める理由です。編集部は2026年9月24日に、キーワード調査ツールで「警察官 年収」に関する実在の質問301件を取得しました。需要の上位40件を数えたところ、9件が「山口県の警察官の年収は?」のように都道府県名を含んでいます(件数は編集部の集計)。読者の側は、額が地域で違うことに既に気づいています。
編集部が到達できなかったもの
総務省の「地方公務員給与実態調査」には、警察職の平均給料月額を経験年数別・学歴別に集計した表があります。編集部は2026年9月24日に、e-Statに公開されている令和7年調査の統計表一覧を開きました。そこに第6表-1・第6表-2「職種別・経験年数別・学歴別職員数及び平均給料月額」(団体区分別/都道府県別)という表題が並んでいます。
ただし編集部は、この表の中の値までは到達できませんでした。提供形式がExcelのみで、2026年9月24日時点の編集部の環境ではセルの値を取り出せなかったためです。値を取り出せなかったのであって、公表されていないという意味ではありません。したがって本記事には、警察職の平均給料月額・平均年齢・平均経験年数の実額を書きません。
編集部はここを正直に書くほうを選びます。平均を書かないぶん、条例の表のほうを最後まで開きました。
現職の給与明細と並べるときに、編集部がそろえる2つの条件
比べる前に、両方の額から同じものを外す必要があります。
- 残業代を外す。給料表の額にも、初任給基準表の額にも、時間外勤務手当は入っていません。手元の給与明細からも、時間外・深夜・休日の手当と固定残業代を外してください
- 賞与を分けて数える。給料表の額は月額です。警視庁の公表資料が年収例に「期末・勤勉手当(年間おおむね4.90か月分)」を積んでいるのと同じ形に、自分の側も月額と賞与を分けてから足します
この2つをそろえずに「警察官のほうが高い/安い」と判断してしまう例を、編集部は繰り返し見てきました。片方に残業代が入って、もう片方に入っていない比較は、何度やっても結論が変わりません。
民間側の額と並べたい場合は、比べる相手を先にそろえてください。国が毎年公表する賃金統計の読み方を書いた記事に、高校卒の月額と、その数字に何が入っていないのかをまとめました。本記事の給料表の額と同じく、どちらも残業代と賞与を外した額です。
交渉で動くのは、級ではなく号のほうでした
編集部には、事業会社で内定時の提示額を決める会議に出ていた者がいます。採用する側として選考に加わっていた時期の話を、1つだけ書きます。
等級と号のある給与テーブルを持っている会社では、選考の場で動かせるのは号のほうだけでした。級を1つ上げるには任せる職責を変える必要があり、入社前の段階では動かしにくいためです。だから提示額の幅は、初めから級の中に収まっていました。
見ていたのは1社の給与制度だけで、他社でも同じとは限りません。ここから割合や傾向を導くことはしません。それでも、給料表を持つ職場で先に確かめるべきは「どの級に入るか」ではないと考えています。「その級のどこから始まり、どのくらいの刻みで上がるか」のほうが、後の10年を左右します。
いまの職種のまま勤め先を選び直す考え方は、在職中のまま次の一手を決める順番を並べた記事にまとめました。現職を続けながら比べるだけなら、今日から始められます。
転職サービスを比べる道具として使う場合
当サイトの運営費は、記事を読んだ人が転職サービスに申し込んだときの報酬でまかなっています。勧める前に、その構造のほうを書きます。
転職エージェントは、法律上は有料職業紹介にあたります。手数料を負担するのは採用した企業の側で、求職者は原則として払いません。だから書類の添削も、賃金相場のフィードバックも、費用をかけずに引き出せます。
並ぶ求人の範囲は、その会社が取引している企業のぶんに限られます。世の中の求人全体ではない、という前提だけは持っておいてください。
サービスに申し込む必要が無い人もいます。次のどれかに当てはまるなら、この記事の6つの手順だけで足ります。
- いまの仕事で覚えることがまだ増えている段階で、賃金にも勤務時間にも困っていない人
- いまの職場で担当や役職が変わる話が出ていて、結果がまだ出ていない人
- 額の予測がつくことと、収入を自分で増やせることの、どちらを優先するかが決まっていない人
この記事は、申し込みを急ぐ理由を提示しません。上の6つの手順は、どこにも登録せずに今日のうちに終わります。事業者の許可番号と届出受理番号は、厚生労働省の人材サービス総合サイトで引けます。番号を引けなかった事業者は、当サイトの記事に載せない決まりです。
民間側で同じ職種のまま勤め先を選び直す場合の材料は、ライン作業から動くときに見る求人倍率の記事にあります。企業が中途でどれだけ人を採っているかは、民間企業が1年間に何人を中途で採っているかの数字で扱いました。
警察官は、資格で入口が決まる職業とは仕組みが違います。法律が入口を決めている職業とそうでない職業を分けた記事で、職業ごとに何が入口を決めているのかを整理しました。警察官の場合、入口を決めているのは資格ではなく、採用する都道府県です。
よくある質問
Q:警察官の年収1000万円はどの階級からですか?
この問いには階級では答えられません。額を決めているのは階級ではなく職務の級だからです。和歌山県の等級別基準職務表(別表第1)に並んでいるのは「係員の職務」「係長の職務」「警察本部の課長、隊長又は監察官の職務」といった職の名前で、編集部が確かめた範囲では巡査・巡査部長などの階級名は出てきません。
そして表そのものが自治体ごとに違います。1,000万円という額が何級の何号給に当たるかは、受ける自治体の条例の別表を開かないと決まりません。
Q:警察官のリアルな年収はいくらですか?
「リアルな額」は、自分が受ける自治体の給料表の1セルに、その自治体の条例が定める手当を積んで出します。参考として、警視庁が公表している実務2年目の年収例はⅢ類採用者で6,045,700円、Ⅰ類採用者で6,574,400円です(令和8年1月1日現在)。
ただしこれは平均ではなく、条件を固定した1人分の試算です。在職者を集計した値ではありません。
Q:警察官の年収は600万円ですか?
額を1つに決める前に、その数字がどの県のどの年次のものかを確かめてください。給料の額は各都道府県の条例で決まり(地方自治法204条3項)、給料表は毎年の人事委員会の報告と勧告の対象になります(地方公務員法26条)。県と年次が特定されていない600万円は、比べる相手になりません。
Q:高卒と大卒で、警察官の給料はどれだけ違いますか?
表の上では「学歴の差」としてではなく、入る号給の位置の差として置かれています。和歌山県の初任給基準表では、上の区分が1級21号給、下の区分が1級5号給です。給料月額にすると265,600円と235,100円で、差は30,500円になります(差は編集部の算出)。東京都はⅠ類が1級25号給、Ⅲ類が1級9号給で、差は同じ16号給でした。
ただし東京都と和歌山県では給料表そのものが違うため、金額を横に並べることはしません。
Q:大卒でもⅢ類で受験できますか?
できます。警視庁の採用サイトのFAQは「大学卒業の人がⅢ類で受験することはできます」と明記しています。同じ回答が、あわせて「Ⅰ類とⅢ類とでは、警察学校での教養期間(初任教養)や初任給などに違いがあります」とも書いています(2026年9月24日に編集部が原文を確認)。初任給を分けているのは最終学歴ではなく、受かった区分のほうです。
Q:警察官の年収は地域でどれくらい変わりますか?
変わる経路は2つあります。1つは給料表そのものが自治体ごとに別の条例に置かれていること、もう1つは地域手当の割合が違うことです。警視庁は初任給を「給料月額に地域手当(20%)を加えたもの」と公表しています。具体的に何%になるかは各自治体の条例に書いてあるので、2つの県を比べたいときは条例を2つ開いてください。
Q:警察官の給料は毎年上がりますか?
上がり方は表の中に書かれていますが、金額は年によって変わります。和歌山県の警察官給料表の1級では、1号給から5号給までの4段で9,500円、21号給から25号給までの4段で6,000円です(いずれも編集部の算出)。上に行くほど刻みが小さくなる形です。表の額そのものも、人事委員会の報告と勧告を経て改定されることがあります(地方公務員法26条)。
まとめ
- 警察官の給料の額に、全国共通の一本の数字はありません。給料・手当の額と支給方法は条例で定めなければならず(地方自治法204条3項)、給与に関する条例には給料表を規定するものとされています(地方公務員法25条3項1号)
- 探すのは表のセル1つです。給料表は「職務の複雑、困難及び責任の度に基づく等級ごとに明確な給料額の幅」を定めなければならないと決まっており(同25条4項)、級と号給の交点に1つの額が置かれます
- 同じ「高卒程度の区分」でも入る号給が違います。東京都の公安職給料表初任給基準表はⅢ類を1級9号給、和歌山県の警察官給料表初任給基準表は下の区分を1級5号給としています
- 初任給基準表の「学歴免許等」の欄に入っているのは、学歴ではなく試験の区分名です。警視庁のFAQも、大学卒業の人がⅢ類で受験できることを明記しています
- 級を分けているのは階級ではなく職です。和歌山県の等級別基準職務表は1級「係員の職務」から9級「警察本部の部長の職務」までを職の名前で並べており、階級名は出てきません
- 採用案内の初任給279,400円は、給料表の額そのものではありません。警視庁の公表どおり、給料月額に地域手当20%を加えた額です
- 総務省の統計表にある警察職の平均給料月額には、2026年9月24日時点で到達できませんでした。取り出せなかったのであって、公表されていないという意味ではありません
何を先に確保したいかで、編集部の答えは2つに割れます。額の予測がつくことを最優先するなら、警察官の待遇は検討する価値があります。給料表が条例で公開され、その表を動かす手続きまで法律に書いてある職場は多くありません。一方、収入を自分の手で増やせることを最優先するなら、当サイトは積極的には勧めません。額の上がり方が表と手続きで決まっている以上、自分の努力だけでは動かせない部分が残るためです。
受ける前に確かめておくことも決まっています。自分が入る級と号給、その自治体の地域手当の割合、期末手当・勤勉手当の月数の3つです。いずれも条例と、各都道府県警察が公表している資料の中で確認できます。
現職と並べる項目も3つあります。表の刻み・地域手当の割合・賞与の月数を、自分の給与明細から出した数字と突き合わせてください。転職サービスを使うなら、民間側で同じ職種の求人をいくつか開き、賃金欄を並べるところからで間に合います。エージェントに頼むのは、その裏取りからです。
ここから先は、検索する言葉を変えるだけです。「警察官 年収」ではなく、受けようと思っている県の名前と「給与に関する条例」を並べて検索してください。別表にたどり着けば、あとは自分の号給を数える作業になります。
※本記事は制度と公表資料に基づく一般的な情報で、条文・条例・規則・公表値はいずれも2026年9月24日時点で確認したものです。給料表の額は毎年の人事委員会の報告・勧告と条例改正で変わります。最新の内容は、各都道府県の例規集と各都道府県警察の公表資料をご確認ください。
※採用の区分・受験資格・個別の給与額については、各都道府県警察と各都道府県の人事委員会へ直接ご確認ください。制度の適用は個別の状況で変わります。当サイトは試験の対策・日程・科目を扱いません。
参考・出典
- e-Gov法令検索「地方自治法」(昭和22年法律第67号。条例で支給できる手当の列挙=204条2項/給料・手当・旅費の額と支給方法は条例=204条3項/法律又は条例に基づかない給付の禁止=204条の2): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067
- e-Gov法令検索「地方公務員法」(昭和25年法律第261号。給与に関する条例及び給与の支給=25条〈3項1号「給料表」・3項2号「等級別基準職務表」・4項「等級ごとに明確な給料額の幅」〉/給料表に関する報告及び勧告=26条): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000261
- e-Gov法令検索「警察法」(昭和29年法律第162号。職員の人事管理=56条1項・2項/警察庁の職員=34条1項/警察官の階級=62条): https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000162
- e-Gov法令検索「国家公務員法」(昭和22年法律第120号。情勢適応の原則=28条2項〈俸給表に関する報告と勧告〉): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000120
- e-Gov法令検索「一般職の職員の給与に関する法律」(昭和25年法律第95号。俸給表の種類=6条1項4号〈公安職俸給表・別表第四〉/職務の級への分類=6条3項): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000095
- e-Gov法令検索「人事院規則九―二(俸給表の適用範囲)」(昭和32年人事院規則9―2。公安職俸給表(一)の適用範囲=4条1号): https://laws.e-gov.go.jp/law/332RJNJ09002000
- 和歌山県例規集「警察職員の給与に関する条例」(昭和29年6月30日条例第21号。給料表=7条3項/等級別基準職務表=別表第1/警察官給料表=別表第2): https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00001240.html
- 和歌山県例規集「警察官の初任給、昇格、昇給等の基準に関する規則」(平成5年3月31日人事委員会規則第3号。新たに警察官となった者の号給=11条/経験年数の換算=14条1項/警察官給料表初任給基準表=別表第6): https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00001242.html
- 東京都例規集「職員の給与に関する条例」(昭和26年6月14日条例第75号。給料表の種類=5条1項〈2号 公安職給料表・別表第二〉/職務の級への分類=5条2項): https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000366.html
- 東京都例規集「職員の給料表の適用範囲に関する規則」(昭和32年11月29日人事委員会規則第6号。公安職給料表の適用範囲=3条): https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000370.html
- 東京都例規集「初任給、昇格及び昇給等に関する規則」(昭和48年3月31日人事委員会規則第3号。公安職給料表初任給基準表=別表第6ハ): https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000375.html
- 警視庁採用サイト「給与・昇任制度」(令和8年1月1日現在。Ⅰ類初任給321,900円・Ⅲ類279,400円〈給料月額に地域手当20%を加えた額・100円未満切捨て〉/実務2年目の年収例Ⅰ類6,574,400円・Ⅲ類6,045,700円〈期末・勤勉手当は年間おおむね4.90か月分〉): https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/saiyo/welfare/salary-step.html
- 警視庁採用サイト「採用FAQ」(学歴は成績証明・学力は採用試験の結果で確認する旨/大学卒業の人がⅢ類で受験できる旨): https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/saiyo/recruit/faq.html
- 政府統計の総合窓口(e-Stat)「地方公務員給与実態調査」令和7年地方公務員給与実態調査結果(第5表-1「職種別職員の平均給与額(団体区分別)」/第6表-1・第6表-2「職種別・経験年数別・学歴別職員数及び平均給料月額」/第7表-1「職種別・年齢別・学歴別職員数及び平均給料月額」。編集部は2026年9月24日時点で表の中の値を取り出せていない): https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200212&tstat=000001242378&cycle=0&tclass1=000001242380&tclass2val=0
- 厚生労働省「人材サービス総合サイト」(有料職業紹介・募集情報等提供事業者の許可・届出の確認): https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/
