高卒で就職した人(新規学卒者)の「離職率」は、就職先選びや企業の採用・育成を考えるうえで重要な指標です。
特に検索で多いのは「1年以内に辞める人はどれくらい?」「3年以内は何%?」「大卒と比べて高いの?」といった疑問です。
この記事では、厚生労働省が公表する新規学卒就職者の離職状況(最新公表ベース)を軸に、高卒の離職率を1年以内・3年以内・5年・10年の視点で整理し、数字の読み方、離職が起きる理由、そして企業・学校・保護者ができる対策までをわかりやすくまとめます。
目次
- 高卒の離職率推移【最新】厚生労働省の発表(令和6年)で読む:1年以内・3年以内を数字で比較
- 【データ】高卒の離職率:1年以内・3年以内・5年を比較(新卒/新入社員)
- 【推移】過去〜令和4年・令和6年まで:高卒離職率の10年以内トレンドをグラフで解説
- 中卒・高卒・大卒(大学卒)で離職率はどう違う?学歴別の比較と理由
- 高卒の離職率が高い理由(原因)12項目:若者の離職率が高い背景を具体化
- 業種・職種・事業所規模で変わる:高卒離職率の内訳(サービス業/飲食/宿泊業)
- 企業ができる離職防止と定着の方法:採用〜入社後までの対策
- 学校・先生・保護者ができる支援:高校生の就職〜定着までの連携
- よくある疑問Q&A:高卒の離職率は本当に高い?数字の読み方と対策の優先順位
高卒の離職率推移【最新】厚生労働省の発表(令和6年)で読む:1年以内・3年以内を数字で比較
高卒の離職率は、厚生労働省が毎年公表する「新規学卒就職者の離職状況」で把握できます。
直近の公表では、令和4年3月卒の高卒就職者の「就職後3年以内の離職率」は37.9%とされ、前年度(38.4%)から0.5ポイント低下しました。
一方で、年によって上がったり下がったりするため、「常に悪化している」と決めつけるのは危険です。
また、離職率は景気・求人倍率・採用の難易度・入社後の育成体制などの影響を受けます。
数字を読むときは、単年の増減だけでなく、複数年の推移と、業種・規模などの内訳までセットで見ることが重要です。
まず結論:高校卒(新規学卒者)の離職率は「3年以内」が焦点、過去と比べて上昇/低下の局面もある
結論として、高卒の離職率で最も参照されるのは「3年以内」です。
理由は、厚生労働省の公表が「就職後3年以内」を中心に整理されており、企業側も定着の目標を3年に置くことが多いからです。
直近の公表では高卒の3年以内離職率は37.9%で、約3人に1人以上が3年以内に離職している計算になります。
ただし、過去には40%を超える年もあり、長期で見ると上昇局面・低下局面の両方が存在します。
したがって「高卒は必ずすぐ辞める」という理解ではなく、「どの条件で離職が増えるのか」を見極める視点が必要です。
この記事でわかること:1年以内・3年以内・5年・10年以内の離職率と推移、違いの解説
この記事では、離職率を「1年以内」「3年以内」「5年」「10年以内」という時間軸で分けて理解できるようにします。
1年以内は入社直後のミスマッチや職場適応の問題が表れやすく、3年以内は育成・配置・人間関係・待遇など複合要因が出やすい期間です。
5年は「定着して戦力化する層」と「転職でキャリアを作り直す層」の分岐が見え、10年は景気や産業構造の変化も含めた長期のキャリア形成が関わります。
さらに、学歴別比較(中卒・高卒・大卒)や、業種・職種・事業所規模による違い、離職防止策の優先順位まで整理します。
データの見方:離職率(率)の定義、就職者母数、調査・資料の注意点(厚生労働省)
厚生労働省の「離職率」は、特定の卒業年に就職した新規学卒者が、就職後一定期間内に離職した割合を指します。
ここで重要なのは、対象が「新規学卒で就職した人」であり、既卒や転職者、フリーターからの就職などは別枠になりやすい点です。
また、離職率は平均値なので、業種・職種・地域・企業規模によって大きくブレます。
さらに、景気が良い(売り手市場)ほど転職がしやすくなり、離職率が上がることもあります。
数字を読む際は「高い=悪」だけでなく、労働市場の状況や、離職が起きた理由(自己都合・会社都合など)を一緒に考えるのが現実的です。
【データ】高卒の離職率:1年以内・3年以内・5年を比較(新卒/新入社員)
高卒の離職率は「3年以内」がよく引用されますが、実務では1年以内の早期離職も非常に重要です。
なぜなら、採用・教育コストが回収できる前に退職が起き、本人も職歴の作り方に悩みやすいからです。
一方で、5年まで見ると「辞める人は早めに辞める」だけではなく、数年かけて不満が蓄積して離職するケースも見えてきます。
ここでは、厚生労働省公表で広く参照される3年以内(直近:37.9%)を軸に、1年以内・5年の意味合いを整理し、どの期間に何が起きやすいかを解説します。
| 期間 | 離職率の意味(見える課題) |
|---|---|
| 1年以内 | 入社前後のギャップ、配属ミス、初期フォロー不足が表面化しやすい |
| 3年以内 | 育成・人間関係・待遇・将来不安など複合要因が出やすい(高卒は直近で37.9%) |
| 5年 | 定着層と転職層の分岐が進み、キャリア形成・昇給・役割変化が影響 |
1年以内の早期離職:入社直後に起きやすい原因と状況(ギャップ・ミスマッチ)
1年以内の離職は、本人の能力不足というより「想定していた仕事・職場と違った」というギャップが中心になりやすいです。
高卒就職は、学校経由の求人票や職場見学で判断することが多い一方、繁忙期の実態、残業、休日、教育体制などが十分に伝わらないまま入社するケースがあります。
また、入社直後は相談相手がいない、叱られ方がきつい、生活リズムが合わないなど、環境変化の負荷が大きい時期です。
企業側が「現場任せ」でOJTが属人化していると、最初のつまずきがそのまま退職につながります。
早期離職は予兆が出やすいので、面談・メンター・業務の段階設計が特に効きます。
3年以内の離職率:高校卒のボリュームゾーンと傾向(若者の離職率が高い背景)
3年以内は、仕事に慣れ始める一方で「このまま続けて将来は良くなるのか」を考え始める時期です。
高卒の場合、同年代の進学組(専門・短大・大学)と数年遅れて社会に出る層がいるため、SNSなどで比較して焦りが生まれやすい面もあります。
また、現場職・サービス職など体力負荷が高い職種に就く割合が相対的に高いとされ、シフトや休日の不規則さが継続の壁になることがあります。
厚生労働省の直近公表では高卒の3年以内離職率は37.9%で、決して少なくありません。
ただし、業種・規模で大きく差が出るため、平均値だけで「高卒は定着しない」と判断しないことが重要です。
5年の離職率で見えるキャリアの分岐点:定着と転職(退職)を分ける要因
5年という期間で見ると、単なるミスマッチではなく「役割の変化」「昇給・評価」「スキルの伸び」「将来像」が離職に影響しやすくなります。
高卒で入社して数年経つと、後輩指導やリーダー補佐など責任が増える一方、賃金や評価が追いつかないと不満が強まります。
逆に、資格取得支援や職種転換の道が用意されている職場では、定着しやすくなります。
本人側も「この会社で伸びる」か「環境を変えて伸びる」かを判断し始めるため、5年時点の離職はキャリア戦略の結果として起きることもあります。
企業は3年以内対策だけでなく、3〜5年の成長設計(評価・育成・配置)まで作ると効果が出やすいです。
【推移】過去〜令和4年・令和6年まで:高卒離職率の10年以内トレンドをグラフで解説
離職率は「その年の若者が弱いから」ではなく、景気や採用環境の影響を強く受けます。
売り手市場では転職がしやすくなり、離職率が上がることがありますし、逆に景気が悪いと「辞めたくても辞めにくい」ため数字が下がることもあります。
直近の公表では、令和3年3月卒の高卒3年以内離職率が38.4%、令和4年3月卒が37.9%と、わずかに低下しました。
このように、ニュースで「上昇」と言われる年もあれば「低下」と言われる年もあり、単年の見出しだけで判断しない姿勢が大切です。
ここでは、推移を見るときのポイントを「何が変わると数字が動くのか」という因果で整理します。
直近の推移:前年からの上昇/低下のポイント(ニュースで話題になる要因)
直近では、高卒の3年以内離職率が38.4%(令和3年3月卒)から37.9%(令和4年3月卒)へ0.5ポイント低下しました。
この程度の増減でもニュースになるのは、母数が大きく、企業の採用・教育コストに直結するからです。
ただし、0.5ポイントの差は「現場感覚では誤差」に見えることもあり、重要なのは内訳です。
たとえば事業所規模が小さいほど離職率が高い傾向が示されることがあり、景気が良い年ほど小規模企業が採用競争で不利になり、ミスマッチが増える可能性もあります。
したがって、上昇/低下の背景を読むには、業種別・規模別の変化とセットで確認するのが実務的です。
景気・求人・就活の変化が離職率に与える影響(高校生の就職活動/面接・内定)
景気が良く求人倍率が高いと、企業は採用人数を確保するために間口を広げやすくなります。
その結果、入社後に「思っていた仕事と違う」「教育が追いつかない」といったミスマッチが増え、離職率が上がることがあります。
一方で、景気が悪いと求人が減り、就職先の選択肢が狭まるため、入社時点の納得感が下がる可能性もありますが、転職市場が弱く離職が抑制される面もあります。
高校生の就職活動は、応募解禁・推薦・面接のスケジュールが比較的タイトで、短期間で意思決定しやすい構造です。
だからこそ、職場見学の質、求人票の情報量、面接での相互理解が離職率に直結しやすいと言えます。
「新卒離職率 10年以内」で見る長期:キャリア教育や制度の影響は出ているか
10年以内の長期で見ると、個人の成長だけでなく、産業構造の変化や働き方改革、教育・訓練制度の整備などが影響します。
たとえば、資格取得支援や職業訓練、社内のジョブローテーションが整うと、同じ会社に残るだけでなく「社内で職種を変えて続ける」選択肢が増えます。
また、高校段階でのキャリア教育が充実すると、入社前の理解が深まり、初期離職の抑制につながる可能性があります。
ただし、制度があっても現場で使われなければ効果は出ません。
長期トレンドを見るときは、制度導入の有無ではなく、利用率・運用の質・上司の関わり方まで含めて評価する必要があります。
中卒・高卒・大卒(大学卒)で離職率はどう違う?学歴別の比較と理由
学歴別の離職率比較はよく行われますが、単純に「高卒だから離職率が高い」と結論づけるのは正確ではありません。
学歴によって就職する業種・職種、企業規模、配属のされ方、研修の厚みが異なり、離職率の差はその構造差を反映していることが多いからです。
直近の公表では、高卒の3年以内離職率が37.9%、大卒が33.8%とされ、高卒のほうが高い結果でした。
ただし、これは「高卒個人の問題」というより、就職先の分布や育成設計の違いが影響している可能性があります。
ここでは中卒・高卒・大卒の違いを、就職先の特徴と支援の差から整理します。
| 学歴 | 離職率の差が出やすい背景(例) |
|---|---|
| 中卒 | 就職先の選択肢が狭くなりやすく、支援機関の活用有無で差が出る |
| 高卒 | 現場系・サービス系など負荷の高い職種比率、事業所規模の影響を受けやすい |
| 大卒 | 総合職配属・研修の厚みがある一方、期待値ギャップや配属不満で辞めることもある |
中卒と高卒の違い:就職先の業種・職種、支援の有無で差が出る
中卒と高卒では、求人の幅と学校・地域の支援体制に差が出やすいです。
高卒は学校の進路指導や求人票、職場見学などの仕組みが比較的整っている一方、中卒は早期に労働市場へ出るため、情報不足のまま就職するリスクが高まることがあります。
また、就職先が限定されると、本人の適性と仕事のズレが起きやすく、離職につながりやすい構造になります。
ただし、支援機関(ハローワーク、若者サポートステーション等)を活用し、職業訓練や段階的就労を挟めると定着率が改善するケースもあります。
学歴差というより「支援と選択肢の差」が離職率に影響する、と捉えるのが現実的です。
高卒と大卒(大学卒)の違い:入社時の期待値、配属、研修・育成の設計差
高卒と大卒の違いは、入社時点の役割期待と育成設計に表れやすいです。
大卒は新卒一括採用で研修が体系化され、配属までに基礎教育を受ける企業が多い一方、高卒は現場配属が早く、OJT中心で立ち上がりを求められることがあります。
この差が、入社直後の不安や「聞けない」「失敗が怖い」といった心理的負担につながり、早期離職の要因になり得ます。
また、大卒は「思っていたキャリアと違う」「配属ガチャ」といった期待値ギャップで辞めることもあり、離職の理由は一様ではありません。
重要なのは、学歴で一括りにせず、入社後の支援設計をどこまで作り込めているかです。
「高卒の離職率が高い」と言われる理由を分解:データで誤解しやすい点も整理
「高卒の離職率が高い」と言われる背景には、平均値だけが独り歩きしやすい事情があります。
実際には、業種(例:宿泊・飲食など)や事業所規模(小規模ほど高い傾向)によって離職率が大きく変わります。
高卒が多く就職する領域に、もともと離職が起きやすい構造(不規則勤務、繁閑差、教育の属人化)がある場合、学歴差に見えて実は産業構造差であることもあります。
また、売り手市場では若年層の転職が活発になり、離職率が上がることもあります。
したがって、誤解を避けるには「高卒だから」ではなく「どの条件で離職が増えるか」をデータで分解して読むことが必要です。
高卒の離職率が高い理由(原因)12項目:若者の離職率が高い背景を具体化
高卒の離職は、本人の根性や忍耐の問題として片付けられがちですが、実際は複数の要因が重なって起きます。
特に入社前の情報不足、入社後のフォロー不足、職場のコミュニケーション不全、働き方と生活の不一致など、仕組みで改善できる要素が多いのが特徴です。
ここでは、現場でよく起きる原因を12項目に分解し、どこに手を打てば離職率を下げられるのかを具体化します。
企業側の改善点だけでなく、学校・保護者が支援できるポイントにもつながる整理にしています。
- 仕事内容・イメージのギャップ
- 人間関係・組織風土
- 働き方(時間・シフト)と制度
- 研修の不足
- キャリアの見通し不足
- 配属・職種の選択ミス
- 賃金・待遇
- 採用時の情報不足
- 家庭/通勤など環境要因
- 事業所規模による支援格差
- HR・人事の受け入れ設計不足
- (補足)本人の相談行動が取りにくい環境
仕事内容・イメージのギャップ:職場見学不足で起きるミスマッチ
高卒の早期離職で多いのが、仕事内容のイメージ違いです。
求人票の文面だけでは、1日の流れ、繁忙期の忙しさ、立ち仕事の負荷、クレーム対応の頻度などが伝わりにくく、入社後に「想像と違う」と感じやすくなります。
職場見学が形式的だと、良い面だけを見て意思決定してしまい、現実との落差が大きくなります。
対策としては、見学時に「大変な点」も説明する、実際の現場を見せる、若手社員と話す機会を作るなど、相互理解を深める工夫が有効です。
ギャップはゼロにできませんが、事前に想定できれば離職は減らせます。
人間関係・組織風土:相談できない環境が悩みを増やす
若手が辞める理由として、人間関係は常に上位に挙がります。
高卒で初めて社会に出る場合、年上中心の職場で「質問していいタイミングがわからない」「怒られるのが怖い」と感じ、孤立しやすいことがあります。
また、指導が叱責中心だったり、ミスを共有して学ぶ文化がなかったりすると、心理的安全性が下がり、退職の決断が早まります。
相談窓口があっても、実際に使える雰囲気がなければ意味がありません。
メンター制度、定期面談、現場リーダーの指導研修など、相談しやすい仕組みと文化の両方が必要です。
働き方(時間・シフト)と制度:休み・残業・評価の不一致
働き方の不一致は、生活に直結するため離職につながりやすい要因です。
たとえば、シフト制で休日が不規則、残業が想定より多い、繁忙期の連勤があるなど、入社前に理解できていないと負担が急に大きく感じられます。
また、評価制度が不透明で「頑張っても報われない」と感じると、継続の動機が弱まります。
高卒の場合、初任給の水準だけでなく、昇給の見通しや手当、休暇の取りやすさが定着に影響します。
企業は制度を整えるだけでなく、運用(休みが取れるか、残業が常態化していないか)を点検することが重要です。
研修の不足:新入社員の不安に対するフォロー/面談が未整備
研修が不足している職場では、若手が「何をどこまでできれば合格なのか」を理解できず、不安が増えます。
特に高卒は社会経験が少ない分、報連相、ビジネスマナー、安全衛生、顧客対応などの基礎を体系的に学べるかが重要です。
現場任せのOJTだけだと、教える人によって内容が変わり、成長実感が得られないことがあります。
また、面談がないと小さなつまずきが放置され、ある日突然退職につながります。
入社1か月・3か月・6か月など節目の面談、チェックリスト、段階的な業務付与を整えると、離職の予防効果が高まります。
キャリアの見通しが持てない:キャリア教育と入社後のキャリア設計不足
「この先どうなれるのか」が見えないと、人は続けにくくなります。
高卒で入社した場合、数年後の役割、昇給、資格、職種転換の可能性などが説明されないと、将来不安が強まります。
また、同年代の進学組が就職するタイミングで比較が起き、「自分はこのままでいいのか」と悩むこともあります。
企業側は、キャリアパスを一つに固定する必要はありませんが、複数の道(現場の熟練、リーダー、専門職、事務転換など)を示すだけでも定着に効きます。
学校側のキャリア教育も、職業理解だけでなく「働きながら学ぶ」視点を持たせると効果的です。
配属・職種の選択ミス:個別適性と業務のズレ(活動/希望の不一致)
配属ミスは、本人の努力では解決しにくい離職要因です。
たとえば、人と話すのが得意な人が黙々作業に配属されたり、体力に不安がある人が重労働中心の現場に入ったりすると、消耗が早くなります。
高卒採用では「現場が足りない部署に入れる」発想が強い企業もありますが、短期的に穴埋めできても離職で結局コストが増えることがあります。
対策は、採用時に適性・希望を丁寧に聞くこと、入社後に配置転換の余地を残すこと、試用期間中に業務適合を確認することです。
配属の柔軟性は、離職率を下げる強い武器になります。
賃金・待遇の課題:生活とのバランスが崩れる
賃金・待遇は、離職理由として表に出にくい一方で、生活を圧迫すると決定打になります。
高卒の初任給は大卒より低い傾向があるため、家計負担がある人や一人暮らしの人は、手取りと生活費のバランスが崩れやすいです。
また、残業代の扱い、手当、交通費、賞与、昇給の実績が不透明だと不信感につながります。
「給料が低いから辞める」というより、「この給料でこの負荷は割に合わない」と感じたときに離職が起きやすい点が重要です。
企業は賃上げだけでなく、負荷の平準化、評価の納得感、福利厚生の実効性をセットで見直す必要があります。
採用時の情報不足:求人票・面接で伝わらないリアル
採用時の情報不足は、ミスマッチの根本原因になりやすいです。
求人票は記載項目が限られ、職場の雰囲気、教育体制、忙しさの波、実際の残業時間などが伝わりにくいことがあります。
面接でも、企業側が良い面だけを強調すると、入社後のギャップが大きくなります。
対策としては、仕事内容の動画、1日のスケジュール例、若手社員の声、繁忙期の働き方などを事前に提示し、質問しやすい場を作ることです。
「正直に言うと応募が減るのでは」と不安になる企業もありますが、結果的に定着率が上がり採用効率が改善するケースが多いです。
家庭/通勤など環境要因:継続が難しくなるケース
離職は職場要因だけでなく、家庭事情や通勤など環境要因でも起きます。
たとえば、家族の介護、家計の急変、引っ越し、メンタル不調、通勤時間の長さなどは、本人の意思だけではコントロールしにくい問題です。
高卒で就職する場合、地元就職が多い一方、配属先が遠い、公共交通が少ない地域では通勤負担が大きくなります。
企業ができることは、事情を言い出せる面談、勤務時間の調整、配置の相談、休職制度の案内など「辞める以外の選択肢」を用意することです。
本人側も、早めに相談できる窓口があるだけで離職を回避できることがあります。
事業所の規模(従業員◯人未満など)による支援格差
事業所規模は離職率に影響しやすい要素として知られています。
小規模事業所では、研修担当や人事専任がいない、教育が現場の善意に依存する、相談窓口がないなど、支援体制が薄くなりがちです。
その結果、つまずきが放置され、早期離職につながることがあります。
一方で、小規模でも社長や上司との距離が近く、丁寧に育成できている会社は定着率が高いこともあります。
つまり規模そのものが原因というより、「仕組み化できているか」が差を生みます。
外部研修の活用、地域の支援機関との連携、OJTの標準化などで格差は埋められます。
HR・人事の受け入れ設計不足:育成と定着が経営課題になっていない
離職が続く企業では、採用は頑張っているのに「受け入れ設計」が弱いことがよくあります。
具体的には、配属先の教育計画がない、指導担当が決まっていない、評価基準が曖昧、面談がない、といった状態です。
高卒採用は、入社後の立ち上がり支援が特に重要なのに、現場任せにすると離職が起きやすくなります。
定着は人事だけの仕事ではなく、現場管理職のKPIとして扱うなど、経営課題として位置づける必要があります。
「辞めたらまた採ればいい」は売り手市場では通用しにくく、採用難の時代ほど定着設計が競争力になります。
業種・職種・事業所規模で変わる:高卒離職率の内訳(サービス業/飲食/宿泊業)
高卒の離職率を改善するには、全体平均ではなく「どこで離職が起きているか」を分解することが近道です。
特に離職率が高いと話題になりやすいのが、サービス業、飲食、宿泊など、繁忙期の波が大きく、シフト勤務になりやすい業種です。
また、同じ業種でも職種(現場・事務・専門)で理由が変わり、事業所規模によって教育・制度の整備度が変わります。
ここでは、業種別・職種別・規模別に「離職が起きやすい構造」と「改善余地」を整理し、対策の打ち手が見えるようにします。
業種別の傾向:離職が起きやすい構造と改善余地
業種別に見ると、離職が起きやすい構造を抱える領域があります。
たとえば飲食・宿泊は、土日祝が繁忙、シフトが不規則、ピーク時の負荷が高いなど、生活リズムが合わずに離職するケースが出やすいです。
サービス業全般でも、顧客対応のストレスやクレーム対応が負担になり、相談できないと早期離職につながります。
一方で、改善余地も大きく、シフトの見える化、休暇取得のルール化、クレーム対応のマニュアル整備、複数人で支える体制などで定着が改善することがあります。
業種のせいにするのではなく、業種特性に合わせた運用設計ができているかが分かれ目です。
職種別の傾向:現場/事務/専門で「早期離職」の理由は違う
職種によって、離職の引き金は変わります。
現場職では体力負荷、安全面の不安、指導の厳しさ、シフトの不規則さが影響しやすいです。
事務職では、単調さや成長実感の薄さ、人間関係の密度、評価の不透明さが不満になりやすい傾向があります。
専門職(整備、IT補助、医療・福祉周辺など)では、資格取得の支援不足や、学習時間の確保ができないことが離職につながることがあります。
したがって、対策も一律ではなく、現場は負荷と安全・指導、事務は成長設計、専門は学習支援というように、職種特性に合わせて設計する必要があります。
規模別(従業員◯人未満〜)の違い:研修・制度・連携の整備度が影響
規模別の違いは、研修・制度・連携の整備度に表れます。
大企業は研修や相談窓口が整っている一方、配属が細分化され「誰が見てくれるのか」が曖昧になると孤立が起きることもあります。
中小企業は現場の裁量が大きく、良い上司に当たれば成長が早い反面、教育が属人化すると離職が増えます。
小規模事業所は人手不足で教える時間が取れず、最初から戦力扱いになりやすい点がリスクです。
規模に関係なく有効なのは、OJTの標準化、定期面談、学校との連携、外部研修の活用です。
「人がいないからできない」ではなく、最小限の仕組みを作ることが離職率を左右します。
企業ができる離職防止と定着の方法:採用〜入社後までの対策
高卒の離職率を下げるには、入社後のフォローだけでなく、採用段階からの設計が不可欠です。
ミスマッチを減らす情報提供、入社後の立ち上がり支援、3年以内の成長設計、相談できる職場づくりを一貫させることで、離職は大きく減らせます。
特に高卒採用は、社会人経験がない状態からスタートするため、最初の3か月〜1年の支援が効果を左右します。
ここでは、採用・育成・制度・データ活用の観点から、企業が実行しやすい対策を優先度高く整理します。
採用の見直し:ミスマッチを減らす求人・面接(リアルな情報提供)
採用で最も重要なのは、良い面だけでなく「現実」を伝えることです。
仕事内容の大変さ、繁忙期、シフト、必要な体力、向いている人の特徴などを具体的に示すと、入社後のギャップが減ります。
求人票の補足資料として、写真・動画・1日の流れ・若手社員のコメントを用意すると理解が進みます。
面接では、志望動機の深掘りだけでなく、本人の不安や希望(通勤、休日、得意不得意)を聞き、配属可能性も含めてすり合わせることが大切です。
「辞めない人を選ぶ」より、「合う人が入る」設計に変えることが、離職率改善の近道です。
入社後3年以内の定着施策:研修・OJT・面談・フォローの設計
3年以内の定着は、入社直後の設計でほぼ決まります。
まず入社時研修で、基本動作(報連相、安全、接客、品質)を共通化し、現場に出た後の混乱を減らします。
OJTは「教える人を決める」「教える内容をチェックリスト化する」「段階的に任せる」ことで属人化を防げます。
面談は、1か月・3か月・6か月・1年など節目で実施し、悩みの早期発見につなげます。
また、現場上司だけでなく、人事や別部署のメンターが関わると、相談の逃げ道ができ離職が減りやすいです。
キャリア支援:個別面談、配置転換、学習支援で「辞めない選択」を増やす
離職を防ぐには、「辞めるか我慢するか」の二択にしないことが重要です。
個別面談で、何がつらいのか(人間関係、体力、将来不安)を分解し、配置転換や業務調整の可能性を検討します。
また、高卒社員は資格取得や技能習得がキャリアの武器になりやすいため、学習支援(受験費用補助、勉強時間の確保、社内講座)を用意すると定着に効きます。
「この会社にいると成長できる」という実感が持てると、多少の大変さがあっても続けやすくなります。
キャリア支援は福利厚生ではなく、離職率を下げる投資として設計するのがポイントです。
職場改善:人間関係・働き方・制度を整え、社員が相談できる環境へ
制度があっても、現場の空気が悪いと離職は止まりません。
若手が辞める職場では、叱責中心、相談しにくい、休みが取りにくい、残業が常態化しているなど、日常の運用に問題があることが多いです。
改善の第一歩は、若手の声を定期的に集め、上司のマネジメントを点検することです。
たとえば、1on1の導入、ハラスメント防止の徹底、シフト作成ルールの透明化、評価基準の明文化などは効果が出やすい施策です。
「辞めた理由」を退職後に聞くのでは遅いため、在籍中に言える環境づくりが重要です。
HRデータ活用:離職の兆候を可視化し、経営として改善を回す
離職は突然起きるように見えて、実際は兆候が出ていることが多いです。
欠勤・遅刻の増加、残業の偏り、面談記録のネガティブワード、配属後の評価の急落など、データで見えるサインがあります。
HRデータを活用して、部署別・上司別・入社月別の離職傾向を可視化すると、問題が「個人」ではなく「構造」だと分かり、改善が進みます。
特に高卒採用は人数が限られる企業も多いので、少数でも丁寧にケースを記録し、再発防止に活かすことが効果的です。
経営会議で定着指標を追うようにすると、現場も本気で改善に取り組みやすくなります。
学校・先生・保護者ができる支援:高校生の就職〜定着までの連携
高卒の離職率を下げるには、企業だけでなく学校・保護者の支援も大きな力になります。
高校生の就職は、短期間で意思決定しやすく、社会経験が少ないまま入社するため、入社前の理解と入社後のフォローが特に重要です。
学校は職業理解と自己理解を深め、保護者は生活面とメンタル面の支えになれます。
さらに、就職後も学校と企業が連携し、早期に相談できるルートを残すことで、離職を回避できるケースがあります。
ここでは、就活準備・キャリア教育・就職後フォローの3つに分けて、具体的な支援策を整理します。
就職活動の準備:職場見学、応募書類、面接練習でギャップを減らす
就職活動の準備で最も大切なのは、職場見学の質を上げることです。
見学では、仕事内容だけでなく、忙しい時間帯、休憩の取り方、若手の働き方、教育の流れなどを確認できると、入社後のギャップが減ります。
先生は「何を質問すべきか」を事前にリスト化し、生徒が遠慮せず聞けるように支援すると効果的です。
応募書類や面接練習では、志望動機を作るだけでなく、本人の希望条件(通勤、休日、得意不得意)を言語化し、企業とすり合わせる力を育てます。
就職はゴールではなくスタートなので、入社後に困らない情報収集力を身につけることが重要です。
キャリア教育の充実:進路選択の軸を作り、早期離職を防止
早期離職を防ぐには、進路選択の「軸」を持たせるキャリア教育が有効です。
たとえば、何を大事にしたいのか(安定、成長、働き方、人との関わり、手に職など)を整理し、職業選択の基準を作るとミスマッチが減ります。
また、仕事の良い面だけでなく、どの仕事にも大変さがあること、最初はできなくて当たり前であることを伝えると、入社後の挫折耐性が上がります。
職業人講話やOB・OG訪問、インターン的な体験があると、現実理解が進みます。
「辞めないため」ではなく「納得して選ぶため」の教育が、結果として離職率を下げます。
就職後フォロー:企業との連携、個別相談で離職リスクを下げる
就職後のフォローは、離職の最後の防波堤になります。
高卒で就職した直後は、生活リズムの変化や人間関係の悩みが出やすく、誰にも言えずに抱え込むと退職に直結します。
学校が卒業生の相談窓口を用意し、必要に応じて企業と連携できると、配置調整や指導方法の改善につながることがあります。
保護者も「辞めるな」と言うより、何がつらいのかを分解して聞き、相談先(学校、企業の人事、外部支援)につなぐ役割が有効です。
早めに相談できれば、休職や部署変更など「辞めない選択肢」が見つかるケースは少なくありません。
よくある疑問Q&A:高卒の離職率は本当に高い?数字の読み方と対策の優先順位
最後に、「高卒の離職率」に関してよくある疑問をQ&A形式で整理します。
離職率は数字だけを見ると不安になりますが、背景を理解し、対策の優先順位を押さえれば、個人も企業も打てる手は多くあります。
特に3年以内離職は「魔の3年」と言われがちですが、実際は入社前の情報と入社後の支援で大きく変わります。
ここでは、なぜ高卒の離職率が高く見えるのか、3年以内に辞めた場合のキャリアの立て直し方、企業が最初に着手すべきポイントを簡潔にまとめます。
Q:高卒の離職率が高いのはなぜ?(理由をデータと現場要因で解説)
A:平均値として高く見えやすいのは、就職先の業種・職種・企業規模の分布が影響するためです。
高卒は現場系・サービス系など負荷が高い職種に就く割合が相対的に高いとされ、また小規模事業所では研修や相談体制が薄くなりがちです。
さらに、売り手市場では若年層が転職しやすく、離職率が上がることもあります。
つまり「高卒だから辞める」という単純な話ではなく、情報不足・受け入れ設計不足・働き方の不一致など、改善可能な構造要因が重なって起きるケースが多いです。
Q:3年以内に辞めたら不利?キャリア上のリカバリー方法
A:不利になる可能性はありますが、リカバリーは十分可能です。
重要なのは「なぜ辞めたのか」を言語化し、次の職場選びで同じミスマッチを繰り返さないことです。
具体的には、退職理由を環境要因・仕事内容・人間関係・働き方に分解し、譲れない条件を決めます。
そのうえで、職場見学や面接で確認すべき質問を用意し、入社後の教育体制や働き方を具体的に確認します。
また、資格取得や職業訓練、ハローワーク等の支援を活用すると、次の選択肢が広がりやすくなります。
Q:離職率を下げたい企業は何から?採用/育成/制度の優先度
A:優先順位は「採用の情報提供」→「入社後3か月のフォロー」→「3年までの成長設計」の順が効果的です。
まず、求人票・職場見学・面接でリアルを伝え、ミスマッチを減らします。
次に、入社後3か月は面談とOJTの標準化でつまずきを拾い、孤立を防ぎます。
そのうえで、1〜3年のキャリアパス、評価、学習支援を整え「続ける意味」を作ります。
制度改定や賃上げは重要ですが、運用とコミュニケーションが伴わないと効果が出にくいので、まずは現場で実行できる受け入れ設計から着手するのが現実的です。